あの出来事に遭遇した瞬間から、ある意味、それまでの自分の人生は終わっている。
だから今は、もう一人の自分が、その出来事がなかったはずの人生を歩いている。
そして、もう忘れさっているかのように心のどこか深いところに追いやっている。
その当時の自分のことなど一切無視して…
それは嘘をつき通し続けると、もはやそれが真実だと思い込むような感覚と似ている。
だけど事実はそうではない。だから後々の人生に歪みが生じてくるのだ。
■■ 辛すぎた過去を抱える人たちの心の叫び ■■
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☑ 話したくない。でも、心のどこかでは私はこんなに苦しいんだ! あふれて いるんだ! 助けて!という思いを持っている。 |
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☑ 話したくない。 話すことでそれを自分で事実として認めることになるから。 |
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☑ 話したとしても何の意味も持たないと思っている。 |
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☑ 話したってどうせ私の苦しみなんて人には分かりっこないと思っている。 |
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☑ 話したところで、慰められたり同情されたりするのが分かっている。 たとえ一時的に、そうされたとしても事実が変わらないことも知っている。 |
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☑ どうせ私は普通の人とは違う! |
トラウマとなる出来事を体験し、いまだ解決できていない人たちの多くは、心の傷が癒えず苦しんだまま今日も生きています。
一方で、そんな事実はなかったか、終わってしまったかのように平然と暮らしているように見える人もいます。
いずれにしても・・
あなたが過去に、辛すぎたトラウマを受け、何の手立てもなく、出来事そのものを無かったことにしているとするならば、一生あなたは目に見えないトラウマから逃れることができません。しかもトラウマは、あなたの性格や行動パターンなど決定づけ、生き方のルールをも支配していきます。
それが、トラウマの真の姿です。
もし、あなたが自身のトラウマと向き合うという自分に許可できず、そんな事実はなかったようにしていたり、心の深いところに抑圧し、忘れてしまっているというのであれば、それはその人の選択なので、決して否定はしません。
しかし僕らの心はトラウマをあの瞬間のまま冷凍保存しているのです。
思考レベルでは忘れてしまっているはずなのに、必ず、身体レベルには感情が宿っています。頭では無かったことが真実となっていても、身体がトラウマを記憶しているのです。
身体には嘘をつけません。
もし、あたなが自分の生き方に歪みを感じていて、それでも自分のトラウマを思い出せない、でも、自身のトラウマと向き合ってもいいと自分に許可ができているのなら、次の質問を自分の心に問いかけてみてください。答えはあなたの心が教えてくれます。
見たくはないけど、つい見てしまう、聞きたくはないけど、つい耳に入れてしまう、そんなネガティブなテーマって、どんなテーマですか?
「これだけは許せない」と思うこと(または人)って・・どんなこと(人)ですか?
もし、あたなが自分の本当の姿を知りたいと思うならば、性格判断や風水、タロット、星座占いなどに頼る前に、まずは自分のトラウマを理解することを勧めたいというのが僕の気持ちです。
そしてトラウマを理解し、そんな自分自身と向き合っていくという決意ができた瞬間から、これまでの生き方の歪みという悪循環を断ち切るための小さな変化の第一歩であることを心が教えてくれるはずです。
誰もトラウマから逃れることはできないのだから・・
あなたがトラウマとなる出来事を体験している間、脳はそのシーンと周囲の背景を記録していきます。脳は、映像や音だけでなく、その瞬間に感じたあらゆる感情をとらえることのできる、とても精密なビデオテープのようなもの。
例えば10年前の出来事について「あの時の失恋がトラウマになって・・」なんて話をする人がいるかもしれないけれど、時間が薬というように、時間の経過とともに苦しい思い出もセピア色の記憶へと変化していきます。
ところが、トラウマの記憶は10年経とうが20年経とうが、セピア色の記憶へと変化することはありません。いつまでもあの時のカラー映像のまま、音も光も臭いさえも。それもトラウマとなった出来事の中でも最も辛く耐え難いシーンが・・
脳が記憶したトラウマ体験のドキュメンタリー映画は、「トリガー(銃の引きがねの意)」と呼ばれる心痛のサインに遭遇した瞬間、時を選ばず突然上映されるのです。
映画が始まり、映像が再び現れると(再体験)、あの時の苦痛や、恐怖、悲しみなどの感情がそのまま、生々しく繰り返されます。
このような不安に襲われると、身を守り、逃げ出すことが緊急課題となり、その映画をきっぱり停止させようとします(回避)。
一度でも再体験したことがあるあなたは、もう二度とあんな思いをしたくないという恐れから、心痛のサインとなるトリガーを察した瞬間、できるだけ早くビデオデッキの〈一時停止〉ボタンを押すことを覚えます。
それだけでなく、ビデオテープが再生されて、以前に起きたトラウマ体験が再び蘇ってこないようにするために、〈一時停止〉ボタンに常に指をかけたまま生活するようになっていきます(過覚醒)。
ところが、いつの間にか、この〈一時停止〉ボタンを押していた力が緩み、突然、映画の断片が現れるのです(フラッシュバック)。
そして、これらの映像は、再びあなたをパニックに陥らせます。
すると、こうした現象から身を守り、その状況やそれを導く思考を回避するために、再び過剰な警戒態勢に戻らなければならなくなるのです。
再体験の症状を起こすトリガーの例
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恐怖で身動き取れなくなっていたにもかかわらず、出来事が起きている間、脳は、例えば下記のような要素を記録し続ける。 | ||
環境的な要素 |
似たような風景、光、物音、場所など
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状況的な要素 | テレビや映画の似たようなシーン(台詞、歌詞)、同じ時間帯、自動車の騒音、傷口の血の感触など | |
居合わせた人物の要素 |
視線、シルエット、加害者と似たような声、感触、匂い、色など |
予期しないトリガーによってフラッシュバックすると、ビクッとしたり、気が遠くなるような感覚を覚えたり、息苦しさを感じたり、心臓がドキドキしたり・・。こうした身体感覚が強く現れてくることによって、これまで以上にトラウマ恐怖を体中に浸み込ませてしまいます。
こうなると、もう二度と再体験(トラウマ体験)したくないという思いが強くなり、フラッシュバックするような環境や状況を極端に避けるようになっていきます。
例えば、引っ越したり、仕事を変えたり、ひきこもったり、活動しなくなったり・・という具合に。
なぜ、このような回避行動をとるかと言えば、それは、自分に起きたことそのものが受け入れられないからです。
もちろん、そのことは誰にも話すことなく、無かったこととして封印する人もいれば、「自分の何がいけなかったのか?」と絶えず自問自答して、自分を否定したり、罪悪感を感じ続けている人もいます。
それだけでなく、他者との関わりの中に不安を覚え、人づきあいを回避したり、過剰に執着したり、逆に攻撃的になったり、いずれにせよ、安定した対人関係を築けなくなっていきます。 特に大切な人との関わりの中で・・
こうして、仮に大切な人が身近にいたとしても、心からの親密さを築いていくことに目に見えない壁を作り、心の孤独を感じながら生きていくのです。
そして・・もがき苦しみながらも、全ての原因がトラウマに結びついているなんて想像すらすることもなく、心の症状が慢性化していくのです。
トラウマ記憶は、通常の記憶とは脳内の異なる部屋で保存されています。
結論から言えば、トラウマの記憶を通常の記憶の部屋へ移してしまえば、いずれセピア色に変わり、苦しみから解放されるようになっていきます。
一般的なトラウマ治療では暴露療法的に、その状況(トラウマ体験のドキュメンタリー映画を観ること)に繰り返し直面させ、恐怖に慣れさせることで、最終的にトラウマ記憶を通常の部屋へと移動させるべく、症状軽減を目指します。
それで効果がある人にはそれでいいのかもしれないし、例えば、動物恐怖症や高所恐怖症などには効果があるのかもしれません。
もう一度、繰り返します。
トラウマ記憶は、通常の記憶とは脳内の異なる部屋で保存されています。
だからこそ、トラウマ記憶のある部屋から通常の記憶の部屋へと統合されることがトラウマ治療の鍵となるのです。
絶対的に安心安全の場で、経験豊富なプロの援助者によって意識的にトラウマ記憶を蘇らせるよう誘導してもらい、感情を体験しながら再体験したり表現されることで、次第に記憶が統合されていく・・だろうと思います。
しかしながら、トラウマ体験の映画を繰り返し直面させようとする治療法は、一方で、トラウマを悪化させてしまうリスクを伴っているということを知っておく必要があります。
これでは援助を受ける側のクライエントさんにはリスクが大きすぎると僕は信じています。
僕が心理臨床家の視座として大切にしているのは、援助を受けるクライエントさんに決してせつない思いや苦しく辛い思いをさせないということ。
僕らセラピスト(therapist)は決してザ・レイピスト(the rapist)になってはいけません。特にトラウマ治療ではリスクというミスは絶対に許されないのです。
たとえどんなことがあっても、それが偶然だとしても、トラウマ治療ではリスクというミスは許されない!
なぜなら、トラウマを悪化させた人たちは、自ら死を選ぶか、あるいは死には至らなくとも、苦しみを逃れるために死んでしまうような危険な行動をとる可能性が高いからです。
だからこそリスクがないムービーマインドセラピーを開発したのです!
感情が圧倒されて、その時の心が受け止めきれなかったようなトラウマ体験のあるクライエントさんの多くは、ショッキングな場面そのものは記憶に焼き付けていますが、その前後の記憶をほとんど覚えていません。
例えば、子どもの頃に公園で犬にかまれて怖い思いをしたというケースの場合、犬が飛びかかってくる瞬間や、犬の吠える声、犬に噛まれた時の痛み、怖すぎた感情など、そのショッキングな場面そのものは鮮明に記憶しているどころか、映像自体、頭から消えていません。
例えば、子どもの頃に公園で犬にかまれて怖い思いをしたというケースの場合、犬が飛びかかってくる瞬間や、犬の吠える声、犬に噛まれた時の痛み、怖すぎた感情など、そのショッキングな場面そのものは鮮明に記憶しているどころか、映像自体、頭から消えていません。
一方で、ショッキングな体験をする前の出来事、すなわち、家から公園に向かっている場面の記憶や、ショッキングな体験をした後の出来事、すなわち、犬に噛まれてショックなまま何とか家に帰りついた場面の記憶など、ほとんど覚えていません(あるいは忘れてしまっています)。
でも、それはある意味、当然のことかもしれません。
ショッキングな出来事にフォーカスしすぎてしまい、通常の記憶とは異なるトラウマ記憶の部屋に保存してしまうほどの圧倒的な体験をしているのだから・・。
振り返ってみれば、ショッキングな出来事を体験する1時間前は、当然に、これから1時間後の未来なんて予想もつかないし、平静な時間を過ごしていたことでしょう。
さらに、ショッキングな出来事の1時間後には、恐怖のMAXの状態よりは幾分かマシな時間を過ごしたのではないでしょうか。
しかしながら、これらショッキングな出来事による(恐怖の)感情に圧倒され過ぎて、さらにその場面が鮮明に焼き付くことで、その前後の記憶を留めていない(フォーカスしていない)としても決して不思議なことではありません。
しかもそのショッキングな場面が生々しく焼き付き、トラウマ記憶として冷凍保存され、残念ながら予期しないトリガーに遭遇するとフラッシュバックを起こすという悪循環になっているのです。
ムービーマインドセラピーでは、このような悪循環を断ち切るべく、トラウマ記憶の仕組みを逆手にとって、第一段階では、ショッキングな体験をする前後の記憶へと意識的にフォーカスさせる(癖をつけさせる)よう援助していきます。
そして第二段階では、トラウマ体験の恐怖に引き込まれて目を逸らすことができなくなるような心の癖を阻止すると同時に、トラウマ記憶の回路を壊していきます。
結果として、トラウマ記憶のある部屋から通常の記憶の部屋へと統合され、仮に思い出したとしても冷静でいられるような状態へと導いていくのです。
ムービーマインドセラピーを体験することによって、少しずつ自分の状況を客観的に感じられるようになって、記憶とその時の感情に振り回されていた日々がいつの間にか無くなっていきます。
ムービーマインドセラピーを体験後、トラウマを乗り越えたクライエントさんは皆、決まってこんな感じで僕に教えてくれます。
「確かにあの辛い出来事はありました。でも、それはもう過去のこと。ずっと過去に縛られていました。やっと前を向いて生きていけます。」
あなたにも前を向いて生きてもらいたい。
僕は心からそう願っています。
あきらめないで!
どうぞ鹿児島の当相談室までお越しください。
ムービーマインドセラピーを体験することで、あなたは必ず素敵な生活を送ることができるようになります。
一緒に頑張りましょう♪
【参考・引用文献】
そもそも私がトラウマ治療に興味を持つきっかけとなったのは大学院生の頃でした。
特に心理的アプローチによる子どものPTSD治療に特化した大学院に通う大学院生だったこともあり、スーパーヴァイザーの指導の下、セラピストとして非日常空間である“プレイルーム”と呼ばれる治療の場でプレイセラピストとして、子どもたちと直接関わる機会に恵まれ、ポストトラウマティック・プレイセラピーによるトラウマ治療が大変効果的であることを体験したことから興味を抱くようになりました。
大学院修了後、さまざまな臨床現場で数多くの大人のクライエントさんとカウンセリングを通して、巡り合う機会に恵まれました。その頃は小さなカウンセリングルームという非日常空間で、徹底的に解決に焦点を当てた心理的アプローチである「短期/家族療法」を自身の心理セラピーの柱に向き合うようになっていました。
ところが、心理臨床家としてキャリアを重ねていたある時、実の父親より性的虐待を受けたことのある女性クライエントと向き合った際、短期/家族療法によるアプローチを実践する自分自身に「セラピストとしてのもの足りなさ」を感じてしまいました。
それからです。僕の短期/家族療法によるアプローチ以上に、性的虐待やトラウマを抱えているクライエントと向き合う為の自分にフィットした心理セラピーはないだろうかと模索し始めたのは・・・
そんな時に、興味を持ったのがNLP(神経言語プログラミング)の「恐怖症治療」でした。この治療法がアメリカのベトナム戦争帰還兵のPTSD治療として開発されたものだったからです。
残念ながら国内には、この「恐怖症治療」をセミナー講師として教えるNLPトレーナーは多数存在するのですが、実際の臨床で実践するPTSD治療者はゼロに等しいように思います。
それから国内のみならず、国外の著名なNLPトレーナーから「恐怖症治療」を学ぶようになりました。
その中でもクロアチア内戦による兵士のPTSD治療に貢献したアメリカのタッド・ジェームズ先生から直接教えていただいた「恐怖症治療」のヒントが、後に僕がムービーマインドセラピー開発する上で大きく影響しています。ありがとうございました。
同じく、サラエボやボスニアなどでPTSD治療に貢献したニュージーランドのリチャード・ボルスタッド先生から直接「恐怖症治療」を教えていただきました。
私の「恐怖症治療」に対する、ありとあらゆる疑問や質問に、大変丁寧に答えていただき、ありがとうございました。
そして…サイモン・タロック先生。
サイモン先生には、タッド先生から教えていただいた「恐怖症治療」を僕の中で完全に理解するために、最大限のサポートをしていただきました。
サイモン先生なしでは、後のムービーマインドセラピー開発は実現が難しかったように思います。本当にありがとうございました。
ところで、このNLPの「恐怖症治療」ですが、ある意味、よほどの治療技術者でない限り、トラウマを悪化させる可能性が大きいと思っています。
それはこの治療法が、トラウマとなった出来事の記憶を再現しながら取り組む方法であるからです。
ですので、一般的なNLPトレーニングで、PTSD治療の臨床経験のないNLPトレーナーから学んだ経験のあるNLP有資格者の方は、絶対にクライエントに対して使用すべきではありません。あまりに危険を冒すリスクが大きいです。
僕はこの「恐怖症治療」のトラウマを悪化させる可能性のある問題点をすべて排除し、一方で、PTSD治療に効果的な箇所は活かし、再発しないよう予防する箇所を加え、また、「短期/家族療法」における言葉の使い方を取り入れるなど、研究と実践を重ねながら、ムービーマインドセラピーを開発しました。
という事も含めて、今現在、ムービーマインドセラピーに関する文献は存在しません。
もし、ムービーマインドセラピーの原型であるNLPの「恐怖症治療」にご興味のある方は、下記の文献をおススメします。
「新装版トラウマ ー心の後遺症を治すー」 ディビッド・マス(著)、大野裕(監訳)、村山寿美子(訳) 講談社 (2004)
この文献ではPTSD専門医の著者がNLPの「恐怖症治療」を「巻き戻し法」という名称で紹介しています。
余談ですが、こちらの文献では監訳者の大野裕先生が医師の立場から、「巻き戻し法」における心の傷をさらに深くする危険性についてご指摘されています。
「心とからだと魂の癒しトラウマから恢復するためのPTSDワークブック -大切な存在であるあなたへー」 メアリー・ベス・ウィリアムズ、ソイリ・ポイユラ(著)、グループ・ウィズネス(訳) 明石書店(2009)
この文献では、上記のディビッド・マス医師の「巻き戻し法」を紹介しています。
どうぞご参考にしてください。
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